Linearの「issue」は「イシュー」ではない ― 課題とタスクを分離する3層構造


TL;DR

Linearのissueに「〜ができてない」という課題を投げ込むと、Backlog地獄になる。Linearの「issue」は日本語の「イシュー(課題)」ではなく「完了判定できる作業単位」だからだ。課題はProject + Documentに、タスクはIssueに分離する3層構造で運用すると、ワークフローが回り始める。

Linearの「issue」は課題ではない

安宅和人の『イシューからはじめよ』における「イシュー」は「解くべき問い」を意味する。一方、Linearの「issue」は「追跡すべき作業の単位」だ。バグ修正、機能開発、設定変更など、完了/未完了が判定できるものがLinearのissueに該当する。

この概念の衝突に気づかないまま使い始めると、こうなる:

  • 「ADHDの克服」
  • 「良質なインプットが圧倒的に不足している」
  • 「生産性高く開発する方法論が確立できてない」

これらは**課題(problem)**であってissueではない。完了条件がないので、ステータスを「Done」にする日が永遠に来ない。結果、全てがBacklogに溜まり、大量のCanceledが生まれ、Todo→In Progress→Doneのワークフローが一度も回らないまま放置される。

3層構造: Project + Document + Issue

Linearだけで課題とタスクの両方を管理するなら、以下の構造が最もLinearの設計思想に沿っている。

graph TD
    P[Project<br/>課題テーマ] --> D[Document<br/>背景・仮説・メモ]
    P --> I1[Issue<br/>動詞で始まる具体アクション]
    P --> I2[Issue<br/>動詞で始まる具体アクション]
    P --> I3[Issue<br/>動詞で始まる具体アクション]
レイヤーLinear機能何を置くか
課題テーマProject大きな問い・関心領域「開発生産性の向上」
課題の深掘りDocument(Project内)現状・理想・仮説・次の一手候補背景や参考リンクのメモ
タスクIssue(Projectに紐づけ)2時間以内で終わる具体的行動「ポモドーロを3日間試す」

ルール: issueのタイトルは必ず動詞で始める。

  • 悪い例: 「ADHDの克服」
  • 良い例: 「ADHD本『○○』の第1章を読んでメモする」

こうすると「完了したかどうか」が自明になる。

既存issueの仕分け方

すでに課題系のissueが大量にある場合の整理手順。

ステップ1: もう関心がないものをCancelする。 考え込まず直感で。

ステップ2: 「〜ができてない」系をProjectに昇格させる。 似たテーマをまとめて3〜5個のProjectを作り、issueの内容をProject内のDocumentにコピペする。元のissueはCancelかArchive。

ステップ3: 行動に変換できるものだけissueとして残す。 タイトルを動詞始まりに書き換え、適切なProjectに紐づける。全部やる必要はなく、3〜5件変換できれば十分だ。

Projectの粒度は、例えばこんな感じになる:

  • 開発生産性 — ツール・方法論・エージェント連携
  • 個人プロダクト — 作りたいもの
  • 自己成長・学習 — インプット・技術キャッチアップ
  • 生活・健康 — 習慣改善

同時にアクティブなProjectは最大7個を目安にする。それ以上は見通しが悪くなる。

運用フロー

毎日やること(5〜10分)

  1. Backlogから「今日やれそうなissue」を最大3つ選んでTodoに移す
  2. 着手したら1つだけIn Progressにする
  3. 終わったらDoneにして、次の1つをIn Progressに

WIP(仕掛かり中)を1つに絞るのが最も重要なポイントだ。ADHD傾向がある場合、同時に複数のIn Progressがあると全部が中途半端になる。

週1回やること(15〜20分)

  1. Project一覧を開いて、各ProjectのDocumentをざっと読む
  2. 「次の一手候補」から1〜2個だけissue化してProjectにぶら下げる
  3. 不要なissueやProjectはDone/Archiveにする

この「課題レビュー」が、安宅的な「イシューからはじめよ」に相当する。週1回だけ上流の課題に立ち返り、そこから今週のタスクを導出する。

最初は使わなくていい機能

Cycle: ワークフロー(Todo→In Progress→Done)が安定して回るようになってから導入する。最初から入れると設定自体がストレスになる。

Label: 当面は不要。使うとしても#today(今日やるもの)1つだけで十分。Saved Viewと組み合わせれば「今日の画面」を作れる。

Sub-issue: issueが2時間で終わらないときだけ分割に使う。課題の階層表現には使わない。それはProjectの役割だ。

まとめ

flowchart LR
    A[課題を認識] --> B[Projectに書く]
    B --> C[Documentで深掘り]
    C --> D[Issueに分解<br/>動詞で始める]
    D --> E[Todo → In Progress → Done]
    E --> F[週1で課題に立ち返る]
    F --> C

Linearを「課題の投げ込み箱」にしてしまうと、それはメモ帳と変わらない。Linearの本質的な価値はワークフローを回すことにある。課題はProject + Documentに逃がし、issueは「今日手を動かすこと」だけにする。まずは動詞で始まるissueを3つ作って、1つをIn Progressにするところから始めればいい。

以上。